2016年6月1日水曜日

孤独が夜の谷を走る



桐野夏生「夜の谷を走る」読みました。
『文藝春秋』連載、2014年11月〜2016年3月。

人には、語りたくない、忘れてしまいたい過去があって当たり前。
でも、この主人公の過去は特異。

西田啓子は元連合赤軍のメンバー。
幹部、永田洋子のお気に入り。
山岳ベースで壮絶な総括に加わり、逃走、逮捕。

出所後は、誰にも過去を知られまいと、
人と関わることを避け暮らしている。
しかし過去はまとわりつき、本人も捨てきれない。

姪の結婚話を機に、昔の「殺人」のことが浮上し、
妹と姪からも疎遠になる。
ジムでも人になじめない。
ストーリー全体をおおう疎外感、孤独感。

そんな西田が、連合赤軍に関心を持つ
フリーランスライター古市に背中を押され、
昔の同志にとまどいながらも会ってみる。

ついには総括の現場まで足を運ぶ。
最終回では、山岳ベースに参加した女たちの行動が
新しい角度から捉えられ、
最後の最後で、西田に希望(の可能性)が与えられる。

第一回目の冒頭に、主人公が台所に貼りついた蜘蛛を見つめる
描写があります。
そこを読んだのは2014年12月ごろ。
そのあと蜘蛛の描写が出てくるたびに、
そのだいぶ前に読んだ冒頭のシーンが
ふわぁと目の前に立ち上がってくるんです。
説得力があるいい小説でした。
夜の谷を走る音がきこえます。

 きょう、21度。

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